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裁ち鋏と、握り鋏と、出刃包丁。

2020/04/15
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信頼する研ぎ屋さんに、久々に裁ち鋏と握り鋏を研いでもらった。ぼくの商売道具だ。

研いだ後の切り心地はスカッと晴れた青空のように気持ちが良い。

普段は自分で研ぐのだけれど、今回は出刃包丁もお願いした。

これはカヤックを始めたころ、ぼくの釣り仲間たちが誕生日に贈ってくれたものだ。名前まで彫ってくれて少々照れくさいけれど、この出刃のおかげでぼくは捌くことを覚えて、釣った魚を食べて暮らす、という生活を手に入れた。

ぼくらは同意するしないに関わらず、否応なく資本主義社会に生きている。

経済が回らなくなったとき、
現金が入ってこなくなってしまう人もいれば、
それでも給料をいただける、という人もいる。
立場はそれぞれ違うのだ。

マスクをして、スーパーに並んで食材を買うより、
筍を掘ったり、
山菜を採ったり、
魚を釣ったりして食糧を調達する方がよっぽど人間的で逞しいことだと思うのだけれど、

全てを一緒くたに、ごちゃ混ぜに、良くないことだと言われてしまうのは、少し悲しい。

お金はないけれども
日に焼けた顔をして、
裏山の山菜なら誰よりも知ってるんだぜ、
この川の、この海の魚の着き場なら任せておけ、
ということを拠り所にして生きてきた人だってたくさんいるはず。

人の価値観はもちろん、
住んでいる環境だって、置かれている状況だって全て違う。
ダイレクトで強いメッセージで共感を得るのは気持ちが良いことかもしれないけれど、
いろんな立場があることを考えていかなくてはいけない。そうしなければ、誰かを傷つけることにもなる。
と、この数週間、いろんなものを見聞きする中で学びました。

もしぼくが今、
小さな田舎町に住む小学生で、
学校にも行けず、
友達にも会えず、
両親の仕事も無くなってしまって、
不安で不安で仕方がないときに、

政府や会社や個人の文句なんて一切言うことなく、
父が黙って釣竿とともに玄関から出て行って、
数時間後、笑顔とともに大きな魚を抱えて戻ってきて、
美味しい晩ご飯を作って、
大きな安心感を与えてくれたなら、
ぼくはその父を一生尊敬すると思います。

みんながどう思うか知らないけれど、
ぼくはそう思います。

「遊び」と「お遊び」は違う。
というのはある人の言った、ぼくの大好きな言葉。
この出刃包丁は、ぼくの大切な遊び道具です。

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