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Taizo Okada

岡田泰三
ロングハイカー
1964年1月22日
神奈川県茅ヶ崎市出身

岡田さんと初めて会ったのは、TJAR2016のスタート地点、ミラージュランドだ。
「会った」と言っても、ぼくが一方的に姿を見ただけなのだけれど。

スタート前、緊張感に包まれた会場に選手たちが姿を現した。29名しか着ることの許されない白いビブス。そんな中に、ひときわ長身の選手がいた。つばの短いキャップにサングラス、拘りのありそうな道具立てが印象的だった。
ビブナンバーは「28」。TJARでは年齢順にナンバーが決定する。その番号から彼が出場選手内でも年を重ねている選手であることは明らかだった。
 岡田さんはこの時、52歳。最高齢の竹内選手に次ぎ2番目の年齢だ。過去をさかのぼっても50代で完走した選手はTJAR創設者の岩瀬幹生選手ただ一人。狭き門をくぐり抜け、この過酷なレースに出場するだけでも難しい。

 岡田さんの経歴は異彩を放っている。航空エンジンのエンジニアとして働く傍ら、グライダーのパイロットとして腕を磨いた。極真空手の腕前も一流で、シニアの大会で全国制覇を成し遂げたこともある。数年前からエンデュランスのレースに出場し始め、トレイルランレース、トライアスロン、アドベンチャーレースなどを幅広くこなす。この世界に飛び込んでわずか3年でTJARへの切符を手にした。

 数々の自己実現を重ねてきた彼の理論は大胆であり、明快だ。
三つのアルプスを越え、415kmを駆け抜けるTJAR。「超人にしか完走できない。」そんなイメージを抱かれることも多いこのレースについて、岡田さんはこう言う。

「TJARの制限時間は8日間。各関門に制限時間は設けられていますが、歩いても完走することは可能なんです。」

TJAR2016。岡田さんはこの理論を体現して見せた。7日19時間56分。見事、50代として史上2人目の完走者となった。
 「まだ、装備を削れると思うんです。」
本戦で使用したバックパックよりさらに容量の小さいMiyama20をオーダーした。2017年分水嶺トレイルではMiyama20を背負い、コースAチーム優勝を果たした。
 岡田さんは、まだまだ挑戦をやめることはない。

                

「Miyama20」の裏側 岡田泰三

2016年8月6日土曜日午後、ミラージュハウス二階の和室。自分はTJARの選手控室で寝ようとしても眠れずにごろごろしていました。

三々五々到着する他の選手達。その中の一人、男澤選手の装備。あれ?見たことがないザックだぞ、、、。

 明らかにカスタムメイドの雰囲気が漂う、かなり軽そうなブルーとグレーのザック。それが気にはなるものの、まだ他の選手と打ち解けて居た訳でもなくて尋ねることも出来ず、またその後は自分の準備にも追われて、あたふたとスタートを迎えることとなりました。

 大会や報告会も無事に終わり、手に入れたTJAR2016の大会報告書に目を通しました。
「そういえば望月さんのザックも変わってたな。blooper backpacks?聞いたことないぞ?男澤さんのは植田徹SP?」

 “blooper backpaks”や“植田徹”をキーワードにネットで検索してみたが何もヒットしない。多分個人的な口コミで作成しているのだろうか?
 年末に男澤さんが東京に来ることがあり、何人かで集まって飲んだ時に思い切って尋ねてみました。
「植田さんにザック作って貰うのってどうですかね?」
「良いと思いますよ、連絡取ったら多分作ってくれますよ」と教えて頂きました。

 私が2016のレースで使ったザックは、その時の自分の考えや装備の組み合わせでは、これしかないと思って選定し、使い心地なども満足していたザックでした。キロ4~5分でフル装備で走っても揺れも少なく安定していて背負い心地もとても良かったです。

 ただ、ザックそのものが若干大きく少し重かったのです。
(注:自分で追加したポケットなど含めて全部で750g程度なので、容量30Lで考えれば十分軽いザックです。)

 2016での私のポリシーは、ヘルメットも含めて全部ザックの中に仕舞えることでした。体格の大きな私はウェアなど全て大きくなるため、ヘルメットも中に入れることを考えるとどうしても30Lクラスのザックが必要でした。2014の台風のイメージがあり、装備を全部ザックの中に仕舞えるのは必須だと考えていました。

 でも、実際に2016の大会に参加してみて、これからはザックにヘルメットは入れなくても良いな、と割り切ることにしました。何故なら天候が荒れてる様な時や、岩場や鎖場などで通過に気を使うような所では、そもそもヘルメットは頭に被るだろ、ということです。また、2016の経験から装備も見直して、TJARに関して言えばもう少し容量が小さくても行けそうだという感触が得られたことがあります。

それでも、20リットルだとやっぱり足りないかな、ちょっと不安だな、25リットルくらいは欲しいかな、、、軽くて(500g未満)走っても揺れない、背負い心地が良くて雨にも強い25リットル位のザックをあれこれ物色し始めていたのです。

なぜ軽さに拘ったか?昨年横窪沢小屋まで下山してきて、小屋のトイレを利用させて貰いましたが、その時に小屋の前にザックを置いて空身でトイレまで行ったら、なんと軽々と走れることか(笑)。

「そうか、もっと軽くしないと駄目なんだな。」と身に染みて学びました。

そうは言っても簡単にはこれと納得出来るザックに巡り当たらず、この春に思い切って植田さんにメッセージを送ってみました。「TJAR2018用のザックを創って貰えませんか?」と。
 その後、植田さんととんとん拍子に話が進み、実際に会って打合せをしましょうということになり、他のザックも見せて貰ったり背負ったりしながら色々と細部を詰めました。

 実際に本番を想定したシェルターやビビィやキルト、防寒着やファーストエイドなどの私の考えるフル装備を打合せに持って行き、植田さんのザックに収まるのかどうかの確認。外のポケットまで含めればどうにかなるのが判り、また背面長やポケットの大きさなど若干の改造をしてもらう事で落ち着きました。

 色は迷いました。グレーにするか、グリーンにするか、ブラウンも良さそう。でも、今までに自分が持ってない色のザック、ブラウンやグリーンだと何かあった場合に山の中で目立たないかな?と考えて自分の好きなブルーに。

 そして先日完成したザックが届き、早速分水嶺トレイルで山デビューさせました。

 普段なら肩のすれ保護の為に鎖骨あたりにテーピングをするのですが、今回は肩や背中には敢えてテーピングなしで背負ってみました。短い一泊二日なのもありますが肩や背中に痛みなども出ることなく、快適に使用することが出来ました。

 今後はバンジーコードの細かいカスタマイズなどして、どんなパッキングが良いのか、防水対策は何をどうやって利用するかなどなど細部を詰めて行きたいと思います。ザックの相性を確認できる長期の縦走のチャンスは年に1回が良いところなので、この夏に間に合うように仕上げて頂き感謝しております。

 丁度2018大会の要項も発表されましたね。

 「あの雲の彼方へ。去年の自分越えを目指して。 まだ限界じゃない、もっと行ける。」
そんな気持ちにさせて貰えるザックです。

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